大判例

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東京高等裁判所 昭和57年(ネ)1285号 判決

二 そこで、請求原因2の不当利得の主張について検討するに、本件手形の被控訴人より前の各裏書人に対し被控訴人が有していた遡求権は、被控訴人の訴外会社に対する本件手形債権の担保となるものであって、民法五〇四条にいう「担保」に該当するものと解され<る。>以下略

右2(一)の(1)ないし(3)の各事実、すなわち、被控訴人が、本件手形23について支払呈示をしなかったこと、昭和五四年六月一五日ころ、被控訴人より前の各裏書人から依頼を受けその意思に基づいて、右23を除く本件手形の右各裏書人欄に無担保裏書文言を記入したこと及び右23を除く本件手形について、遡求権の消滅時効中断の措置をとらなかったことは、いずれも当事者間に争いがない。

しかしながら、前項において補正の上引用した原判決認定の事実関係によれば、本件手形は、納入された製品代金の支払のために、取引先宛てに訴外会社が振り出したものであり、訴外会社と被控訴人との間の銀行取引契約上の債務につき禮治が連帯保証人となった経緯からいっても、禮治としては、もともと本件合意当時(昭和五四年六月一〇日ころ)から、右合意に基づき被控訴人より本件手形の裏書交付を受けても、被控訴人の前者(そのほとんどは訴外会社の前記取引先である。)に対し、裏書担保責任を追及する意思はこれを有していなかったものと認められるのであり、その後禮治は、被控訴人において無担保裏書文言を記入した本件手形を二度にわたり異議なく受領し、就中、二度目の同年八月一日には、本件手形23の支払呈示がされていないこと及び右23を除く本件手形について遡求権の消滅時効中断の措置がとられていないことをも認識しながら、これを受領しているのであって、これらを通じ、禮治は、被控訴人によって本件手形上になされた無担保裏書文言の記入を承認するとともに、本件手形につき、被控訴人より前の各裏書人に対する遡求権の行使はもはや不可能となっていることをやむをえないものとして容認し、右のような事態となったことについてその責任を問うこともしない旨を、被控訴人に対し表示したものと認めるのが相当である。原審における証人永松義幹の証言(第一、二回)及が控訴人本人尋問の結果中、右認定に反する部分はにわかに採用することができず、また、本件合意を証する協定書が、被控訴人によりいったん付加挿入された裏書人の担保責任を追及しない旨の文言が削除された上で調印に至っていることは、先に認定したとおりであるが、裏書担保責任追及の是非は、本件においては、本件禮治と被控訴人のみとの間で決せられるべき筋合のものではなく、しかも、右協定書の調印は、無担保裏書文言の記入された本件手形三八通が禮治により異議なく受領されたのちにされているのであって、右付加挿入はもはやさしたる意味をもたないこととなっていたものとみられるから、右文言が削除されて協定書が調印された事実によっては、禮治が裏書担保責任追及の意思を有しておらず、被控訴人に対し前記の趣旨を表示したとの右認定を左右することはできず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

そうすると、被控訴人が前記請求原因2(一)の(1)ないし(3)の各事実によって本件手形の前記各裏書人に対する遡求権を喪失せしめたとしても、禮治は前示のとおりそのことを被控訴人に対し容認したものというべきであるから、控訴人主張のように禮治が民法五〇四条により連帯保証債務ないし本件合意に基づく債務を免れたものと認めることはできないものというべきであり、したがって、右債務がないのに弁済をしたこと又は本件合意が錯誤により無効であることを理由とする控訴人の不当利得の主張は、その前提とする右免責が認められない以上、いずれも理由がないことに帰する。

(鈴木 吉井 河本)

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